わが社は、国語教育の専門出版社として、昭和57年に産声を上げました。爾来常に、国語とは何か、日本語とは何か、指導要領にいう、国語を愛する心はどうのように育てればいいのか、限りなく大きなテーマに取り組んですでに29年の歳月が流れました。
出版事業とは、文化事業である。この定義こそ、まさに当社の出発点です。しかも出版の中で、あえて国語関係の書籍に焦点を当てた最も大きな理由は、国語がすべての文化活動の原点であると同時に、国語こそ、民族のアイデンティティだと考えるからです。 「人はある国に住むのではない、ある国語に住むのだ、祖国とは国語だ」と言ったのは、ルーマニア生まれの哲学者、E.M.シオランという人ですが、この言葉こそ、今の日本人が最も真剣に意識の中に刻み込んでおくべき言葉ではないでしょうか。
日本語の乱れが叫ばれて久しくなりますが、日本語が乱れるのは国語教育の貧困さが最も大きな原因です。日本人は日本語という国語を持っています。しかし、実はこれは当たり前のことではありません。太平洋戦争に敗れた日本は、あのとき、日本人の国語が日本語ではなく英語になってしまう可能性もあったはずです。現に、そのような国は世界に少なくないのです。日本語を国語にできる日本人は、本当に幸せな国民だと思います。
国語を愛する心を、すべての日本人が共有できる社会を作りたい、これは私の最大の願いであり、同時に我が尚文出版の永遠のテーマでもあります。私たちは、今後とも、この果てしないテーマを追い続けていきたいと思います。 |